日本語の源流をたどる   今井欣一
『地名』を基本に据えて、それぞれの地名の意味を解き明かすことをテーマにし、様々な角度から日本語の源流をたどるページです。
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日本語最古の文献資料は、『古事記』『日本書紀』『風土記』など、奈良時代初期に編纂された書籍です。これ以前のまとまった資料はない、と考えるのが普通ですが、いま私たちが毎日つかっている『地名』に、それが残されている可能性があります。

このホームページは、国土地理院刊行の地形図・地勢図にのる「山、川、峠、島、岬」などをそれぞれ群として捉え、各地名群の特性を比較対照して、地名の意味、命名年代の推定を行います。こうして分析すると、「島>岬>峠」の命名順位を始め、現存地名に縄文~弥生時代に命名されたものが大量に残されている姿が浮上します。 この資料をもとにして、いまは知られていない『倭語;縄文・弥生時代の言語』の基本様式をさぐることが、『日本語の源流』の主題です。


たとえば、タイトル写真にのる国花の『さくら』は、桜峠・桜島・桜沢など、地名にも使われています。が、この名は∨型の谷に当てた例が多く、とくに峠に多用されて、岬に使用例がない事実が浮かびあがります。地形を表現した地名では、言葉の使用状況に極端な差が現われるのが特徴です。この特性を利用してサクラの語源を検証すると、峠・谷型地形の意味と、一気に開花する見事な咲き方と鮮やかな散り際を、わずか三音で表現した『さくら』、という言霊の素晴らしさが解ります。

日本一の「富士の山」は、万葉集にも「富士の高嶺、富士の嶺」と詠われ、いまの読み方も訓音併用、湯桶よみの「ふじサン」です。この読み方をみると、富士山は山そのものに当てた名でなく、富士という地域にある山と考えて良さそうです。地名研究者の間では、富士は駿河国富士郡を指すという説が有力視され、富士郡の起源地名が、富士山本宮浅間大社のある、静岡県富士宮市宮町に想定されているところは見逃せません。

上記の写真は、河口湖で撮られていますが、河口湖という名に疑問を持たれたことはないでしょうか。一般に河口とは、川が海や湖に流れ込む地点、または合流点につけた地名です。なぜ、湖の名を「河口湖」としたのでしょう。これも全国の湖や川の名を調べれば、簡単にわかります。二つの地名群は、湖や川に直接つけた例は皆無に近く、大多数が湖畔、川の流域で、命名当時にもっとも重要な地点から採られています。つまり地名の転用が考えられるわけです。河口湖は、山梨県南都留郡富士河口湖町河口(寺川の河口)が起源地名にあがります。富士五湖の他の四つの名も、山中湖(←山梨県南都留郡山中湖村山中)、西湖(←富士河口湖町西湖;旧足和田村)、精進湖(←富士河口湖町精進;旧上九一色村)、本栖湖(←富士河口湖町本栖;旧上九一色村)からの転用と解けます。

富士山・富士五湖のように、地名は転用された例が多く、その語源を考える際には命名地点がどこであったかを調べる必要があります。本書が、厳格に地形を表現した地名の語源探索の基本に「峠、岬」を選定したのも、この手間を省くためで、命名地点が判りやすい利点があるからです。

このホームページでは、国土地理院刊行の5万分の1地形図にのる『島、岬、峠』名と、市町村の字名(町名)に使われている『〜島、〜崎、〜鼻、〜坂、〜越』地名群のデータを比較対照して、倭語の基本様式、地名の意味と命名年代の探索、地名にみられる基本法則をさぐります。ここでは、いま私達が毎日使っている地名が、縄文・弥生時代につけた可能性が高く、「倭語→和語→日本語」を基本に、さまざまな仮説をたて、『日本語の源流』(検索エンジン Google 第1位 Yahoo! 第1位)をたどります。なお、『作品一覧』にのせた書の構成は、以下のとおりです。

  第一巻『縄文・弥生の地名』 第二巻『地名考古学』
  第三巻『倭語の法則』 第四巻『温故知新・川名の起源』
  第五巻『地名の由来』 第六巻『律令時代の日本』
  第七巻『国名と県名 東日本』 第八巻『国名と県名 西日本』
  第九巻『地名資料 字名』 第十巻『地名資料 島、岬、峠』
  第十一巻『地名資料 山、川』 第十二巻『地名資料 神社、国郡名』

緑色の巻は製作中で、まだ公開していませんが、第一巻から四巻は、第九巻から十二巻の『地名資料』にのるデータベースの分析、第五巻から八巻は、その解析結果を拡大した応用例です。作品集のなかで、もっとも重要なものが第九巻と十巻の『地名資料』です。第一巻から四巻を御覧になる際、『地名資料』に目を通していただければ幸いです。これらの作品は「PDF」で編集していますので、インターネットから「Adobe Reader」をダウンロードしてお読みください。

(注)サクラの語源解説は、第一巻『縄文・弥生の地名』の「2峠名の由来(1)桜峠」の項、富士山と富士五湖は、第五巻『地名の由来』の「4山名の起源(2)浅間山と富士山」に詳述しました。